美味しく食べるということ

お口の働きで大切なのは、なんといっても「食べること」なの。

食べることは生きること

食べるを英語にすると、「EAT」です。
食べることには次のような意味が隠されています。

E = enjoy「楽しみ」美味しくお食事をすることそのものは楽しみです。
A = adjust「調整」お食事の時間は一日の生活リズムを調整しています。
T = training「訓練」食べるために口を動かす行為自体が機能維持の訓練です。

食べることは、栄養を摂ることだけが目的ではありません。味わう、食感、見た目で食欲がわき、美味しく楽しむというプロセスすべてが食べるということです。

食べるためのお口

ほほにはこんな汚れがたまります

食べるためには、歯がきちんと揃っていることが、第一です。食べ物を目で確認し、肩・腕・手・指の筋肉を使ってはしやスプーンなどで口元まで運びます。
次に食べ物をよく噛み飲み込みますが、食べ物を口に入れる際には、唇をしっかりと閉じる必要がありますし、飲み込む際には、のど・首などの筋肉も使います。また、一瞬息を止めることになるため、呼吸のコントロールが無意識にできなければ食べることが難しくなります。
私たちは、当たり前のように好きなものを好きなだけ食べることができますが、加齢や疾患によって、お口まで運んだり、食べ物を噛んだり、飲み込んだりする力は低下するため食べられないものが増えたり、むせなどに注意して食べなくてはならなくなります。


食べるための一連の流れ(嚥下のしくみ)

お口の4大機能に「食べる」と「呼吸する」がありますが、食べ物を飲み込む際には、食道のみに食べ物を送り込めるよう、気管を一瞬閉じる必要があります。そのため、一度呼吸を止めることができなければスムーズに飲み込むことができません。
健康であれば、こういった食べるための一連の流れを無意識に行うことができます。
一度、整理しておきましょう。

嚥下のしくみ

1. 認知期 ………食べ物であることを確認し、どのように食べるか判断する

認知期

食べ物を見て「おいしそう」、「熱そう」と思うことによって、お口やからだは食べる準備をはじめます。
ぼんやりしていたり、声をかけないと眠ってしまうなどの意識障害があるときは、お食事をするのに適した状態とはいえません。そのような状態で「食べさせられ」ても、美味しく感じず、お食事が苦痛になってしまいます。「おいしいもの」だと認識できてこそ、お食事の楽しみが生まれるのです。


2. 準備期 ………食べ物をお口に入れ、よく噛んで飲み込みやすくする

準備期

食べ物をお口に入れる際には、歯と口唇を使っています。口唇の筋力が低下すると、お口からこぼれてしまったり、だ液がよだれとなって出てきてしまいます。
また、食べ物を噛むときは、舌と歯が協働してスムーズに動くことが必要です。
ゼリーやペースト状の食べ物は、舌を上下前後に動かして上あごに押し付けます。固形物は、この動きに加えて舌を左右に動かし、奥歯の上に乗せ、すりつぶしながら噛んでいます。この時、下あごは上下だけではなく、旋回する動きが加わります。


3. 口腔期 ………食べ物をお口からのどに送る

口腔期

舌の運動によりかたまりになった食べ物は、舌の後方へと送られます。舌の奥までくると、舌の付け根と軟口蓋(なんこうがい・鼻へ通じるドア)の間を通過して、のどへと送り込まれます。


4. 咽頭期 ………食べ物がのどを通って食道へ送られる

咽頭期

食べ物のかたまりがのどから食道へと送られるのは一瞬の出来事です。のどに入ったかたまりは、軟口蓋と咽頭蓋(こうとうがい・飲み込む瞬間に気管にフタをするためのドア)が閉じられたタイミングで食道へと送り込まれます。
舌の付け根がグッと上あごに押し付けられることで、のどに圧力がかかり、飲み込むことができます。この一連の流れを「嚥下反射」といい、反射的に行われます。


5. 食道期 ………食べ物を食道から胃へ送る

食道期

食道に送られたかたまりは、逆流を防ぐために食道括約筋がピッタリと閉鎖されながら胃へと送り込まれていきます。食道の上下にある食道括約筋の閉鎖が不完全な場合、逆流性食道炎や誤嚥性肺炎の原因になります。


お食事をするための環境を整える

誤嚥予防のためにも、お食事の環境を整えることはとても大切です。
スムーズに摂れない方には、お食事に意識を集中してもらうことがポイントです。
落ち着いた雰囲気の中でお食事ができるよう、環境を整えましょう。

お食事をするための環境を整える

食べることを意識する、かあ。おなかがすいていると、勢いよく食べちゃってるかも。

一口30回噛んで食べるのが一番いいとされているの。よく噛むことは脳の活性化にもつながるし、食べ物の消化・吸収を助けてくれるのよ。