口腔ケアとは

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お口の問題

口腔ケアを行う前に、まずはご高齢の方のお口の中がどうなっているのかを知りましょう。そして、高齢者のお口の中の問題を理解しておきましょう。

お口の働き

お口には「食べる」「話す」「呼吸する」「表情をつくる」という「4つの大きな機能」があり、わたしたちの生活に深く関わっています。

ご高齢の方・要介護者のお口の中の特徴

むせる高齢者女性
ご高齢の方のお口の中を考える前に、まずはその方の日常生活を考えてみましょう。

むし歯

むし歯
ご高齢の方のむし歯の原因には、歯ぐきが下がり根元が露出することが挙げられます。根元はやわらかく、むし歯になりやすい部分です。

歯周病(歯槽膿漏)

歯周病
歯と歯ぐきのすき間に歯垢や歯石がたまり、その中にいる細菌が歯ぐきに炎症を起こす病気が歯周病(歯槽膿漏)です。

 入れ歯

入れ歯の種類
失われた歯をそのままにしておくと、さまざまな悪影響が考えられ、選択肢のひとつとして入れ歯が利用されることがあります。

乾燥

お口の乾燥
多くのご高齢の方は、お口の中が乾燥しやすい傾向にあります。口腔乾燥は粘膜の新陳代謝や自浄作用の低下につながり、お口の中が汚れやすくなります。

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お口の働き

お口には「食べる」「話す」「呼吸する」「表情をつくる」という
4つの大きな機能」があります。

お口の4大機能

「食べる」と「呼吸する」
お口から食べることは、栄養状態や体力の維持・向上だけでなく、毎日を意欲的に過ごすためにもとても大切です。
食べるためには、まず歯がしっかりそろっていることが重要です。食べものを目で確認し、肩や腕、指の筋肉を使って、おはしやスプーンで口元まで運びます。その後、食べものをよくかんでから、飲み込みます。お口に食べものを入れるときは唇をしっかり閉じる必要があり、飲み込む際には喉や首の筋肉も使います。
また、飲み込むときには一瞬息を止める必要があるため、無意識のうちに呼吸をコントロールできないと、食事が難しくなります。私たちは普段、好きなものを好きなだけ食べていますが、加齢や病気の影響で、食べものをお口に運んだり、かんだり、飲み込んだりする力が弱くなります。その結果、食べられないものが増えたり、むせに注意しながら食事をしなければならなくなることもあります。
「話す」
人とコミュニケーションを図るうえで、会話は欠かせません。会話をするためには、舌やほほ、唇の運動機能が必要です。これらがバランスよく動くことで、はっきりと話すことができます。しかし、こうした運動機能は年齢とともに少しずつ低下していきます。足や腕の筋肉と同様に、お口の運動機能を維持するためにもリハビリが大切です。
また、お口の運動機能は食事の際にも必要です。食べることは、話すことの訓練にもなり、同時に呼吸のトレーニングにもつながります。
「表情をつくる」
ご家族やご友人と楽しく会話をする際に欠かせないものが「うれしさ」や「楽しさ」を伝え合う「表情」です。 表情をつくるためには、お口全体のほほなどの筋肉がスムーズに動くことが大切です。 心豊かな生活を送るためには、お口の働きを保つことはとても大切です。
そのほかに重視される点は「見た目の美しさ」です。口元の美しさや若々しさは、コミュニケーションを図るうえで与える印象を左右し、 入れ歯を入れたときと入れないときでは、表情がガラッと変わります。 また見た目が与える印象により、表情だけでなく、気持ちも大きな違いが生まれるでしょう。
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4大機能を維持するためには

「食べる」「話す」「呼吸する」「表情をつくる」をスムーズに行うためには、お口の中がだ液でうるおっていることが大切です。だ液が十分に分泌されず、お口の中が乾燥すると、お口の中に汚れがつきやすくなります。
また、ほほの内側や歯ぐきが食べものなどで傷ついたり、うまくかんだり飲み込むことがむずかしくなってきます。お口の4大機能を維持する以外にも、だ液にはお口の健康を守る大切な働きがあります。 だ液をしっかり分泌させてうるおい、お口の健康を維持するためにも、ご自分のお口から食べることはとても重要です。
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POINT

健康で豊かな生活をおくるためには、お口の機能が正常に働いていることが重要です。

お口の機能を保つことができれば、若々しく前向きに生きることにつながるの。
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ご高齢の方・要介護者のお口の中の特徴

高齢になるとお口の機能はだんだん低下し、食べたり、会話するのがむずかしくなってきます。

ご高齢の方の日常

ご高齢の方のお口の状態について考える前に、まずはその方の日常生活を考えてみましょう。

むせる高齢女性
よく見られる症状として、次のものが挙げられます。
  • 食べこぼしがある
  • むせる
  • うがいができない
  • 口臭がある
  • お口が渇く
  • 歯みがきができない、またはしない
  • 話をする機会がない
  • 人と関わらない
  • 笑顔が見られない
  • 転びやすい
  • 微熱が続く

これらの症状は、口腔機能の低下を示すサインのひとつです。
まずは、歯科医師や歯科衛生士へ相談することをおすすめします。上記の症状を改善すべく「以前の口腔機能をできるだけ取り戻すことを目指した口腔ケア」 が必要です。

ご高齢の方のお口の中の特徴

ご高齢の方のお口の中は、若い世代とは異なる特徴が見られます。

入れ歯いろいろ
治療のあと・ 入れ歯が多い
ご高齢の方は、すべての歯がそろっていることが少ないため、入れ歯を使用している方が多く、また、さまざまな治療による「つめ物」や「かぶせ物」が多く見られます。
自浄作用(じじょうさよう)が働かない
お口には本来、自ら清潔を保つ力である「自浄作用」が備わっています。自浄作用とは、歯の表面や歯と歯のすき間、舌などの口腔粘膜に付着した汚れや細菌をだ液により洗い流し、お口の中を清潔に保つ働きのことです。
運動障害やまひがあると、口腔機能が十分に働かず、自浄作用も低下しやすくなります。ご高齢の方の場合は、自浄作用が知らず知らずのうちに低下していることが多いです。
歯ぐきが下がっている
むし歯・粘膜疾患が増える

ご高齢の方のお口の中は、特定の部位にむし歯ができやすくなる傾向があります。
たとえば、次のようなむし歯がみられます。

  • 歯ぐきが下がることで生じる、歯の根元の部分のむし歯
  • つめ物、かぶせ物の中にできる隠れたむし歯

 

自浄作用の低下により、本来洗い流されるはずの食べかすや細菌がお口の中で増殖し、むし歯や歯周病の原因となります。
また、加齢に伴い抵抗力が落ちることで、歯周病や粘膜疾患を進行させます。
粘膜疾患とは、お口の中のほほやあご、舌に発症する病気のことで、代表的なものには「口内炎」や「義歯性腫瘍」などが挙げられます。

tベカスの残りやすいお口の中
お食事がお口の中に残る

ご高齢の方の中には、きざみ食やとろみをつけたお食事を召し上がる方もいらっしゃいます。きざみ食は歯のすき間やお口の中に食べかすが残りやすく、粘り気の強いペースト食は、お口の中に長時間とどまりやすくなります。
ご高齢の方の多くはだ液の分泌が十分ではなく、お口の中は乾燥しやすくなります。お口の中がだ液でうるおっていないと、食べかすを洗い流す働きが弱くなったり、食べものを飲み込みにくくなります。

こういった原因により、口腔環境はよくない状態になり、お口の中が衛生的でないことが原因で起こる「むし歯」や「歯周病」も悪化します。

お口の中の乾燥
お口の中が乾燥する
加齢に伴い、だ液の分泌量は減少します。
とくに、ご高齢の方のお口の中は内服薬の副作用で さらにだ液が少なくなり、お口の中が乾燥しやすくなります。
そのため、だ液本来が持つ重要な役割を十分に果たすことができなくなります。
かむ、飲み込む、発声することをスムーズに行うことができなくなり また、乾燥により入れ歯が痛くて入れられない、などの症状があらわれます。
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POINT

お口の機能低下は、衛生状態の悪化にもつながります。

お口の機能が低下すると、だ液が出にくくなって 細菌が増えたり、汚れやすくなったりしてしまうの。
お口の中が不衛生になって乾燥すると、お口が自分で自分をきれいにすることがむずかしくなってきてしまうのよ。
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むし歯

歯ぐきが下がると、歯の根元の部分にむし歯ができやすくなります。

ご高齢の方のむし歯の特徴

ご高齢の方に特徴的なむし歯の原因として、歯ぐきが下がって歯の根元が露出することが挙げられます。歯の根元の部分は歯の質がやわらかいため、むし歯になりやすいのです。
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知らないうちに進行するむし歯

年齢を重ねると、だ液の分泌が減り、歯みがきが十分でなくなったり、みがき残しが増えたりします。これらのことが原因で、歯の根元の部分のむし歯は、進行が早くなりやすくなります。このようなむし歯は、複数の歯に同時に発生することが多いです。
また、年齢とともに歯の神経の感覚も鈍くなるため、むし歯が進行しても症状が現れにくくなります。そのため、気づいたときには歯が根元から折れてしまうこともあります。
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POINT

根元のむし歯は痛みなどの自覚症状が出にくく、気づきにくい場合があります。

ご高齢の方は痛みの感覚が低下してしまうの。だから、わたしたちが気をつけてケアをしていると、むし歯を防げるかもしれないのよ。
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歯周病(歯槽膿漏)

歯周病は、歯やあごの骨を溶かしてしまうとても危険なお口の病気です。

歯周病とは?

歯と歯ぐきのすき間に歯垢や歯石が溜まって、その中にいる細菌が 歯ぐきに炎症を起こす病気が歯周病(歯槽膿漏)です。
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こんな方は要注意

歯が痛い女性
下記の症状に当てはまるものがあれば、歯周病の疑いがあります。
  • 口臭が気になる
  • お口の中がネバつく
  • 歯ぐきが赤くなっている
  • 歯ぐきが腫れている
  • 歯ぐきから出血する
  • 歯が長く見える
  • 歯がグラつく
  • 歯ぐきから膿がでている
  • 歯をかみしめると痛い

まずは、歯科医師・歯科衛生士への相談をおすすめします。

歯周病の影響

生活習慣病のひとつである歯周病は、歯を失う最大の原因です。歯周病菌は、誤嚥(ごえん)性肺炎の原因のひとつと考えられています。歯周病は国民病とも呼ばれており、免疫力が低下しはじめる40歳以上の日本人のうち、約80%の方が歯周病にかかっているといわれています。
歯を失うことや歯周病は、お口の中だけでなく、全身の健康にも関わる大きな問題です。残存歯数(お口の中に残っているご自身の歯の本数)や歯周病の有無が、誤嚥性肺炎だけでなく、認知症、発熱、心臓病、糖尿病など、さまざまな病気の予防につながることが、近年の研究で明らかになってきました。
全身の健康を守り、歯周病を未然に防ぐためにも、お口の中を清潔に保ち、定期的に健診を受けることが非常に重要です。
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POINT

40歳を過ぎると、日本人の80%が歯周病にかかるといわれています。

ほとんどの人は、歯周病が原因で歯を失ってしまうの。 歯周病になった初期は自覚症状があまりないから、ひどくなってから気づくことが多いの。 だから歯周病を予防することも、定期的な歯科健診を受けることも大切なのよ。
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 入れ歯

歯を失うことはお口だけではなく、全身の健康へ影響をおよぼすことも考えられます。

本来あるべき歯を補うために

入れ歯いろいろ
きちんと歯みがきを行い、歯科医院で定期的な健診を受けて、健康的な生活を続けていれば、本来、歯は一生保つことができます。それでも歯を失ってしまった場合は、失った歯を補う必要があります。もしそのままにしてしまうと、さまざまな悪影響が生じる恐れがあります。
歯を補う方法のひとつとして、入れ歯があります。

入れ歯を必要とする理由

つまづく男性

歯を抜けたままにしておくと、かむ力が低下するばかりではなく、 残りの歯に負担がかかる、歯が傾く、歯が伸びるなど、かみ合わせが悪くなっていきます。 こういった症状の進行により、豊かな食生活が失われる恐れもあります。また、人は歩いたり踏ん張ったりするときに 奥歯をかみしめることで、しっかりと力を入れることができています。歯を失ったままにしておくと、奥歯をかみしめることができません。 そのため、歩いているときにふらついたり、転びやすくなったりしてしまいます。安全な生活を送るためにも、入れ歯を入れることは大切です。

こんな方は要注意

次のような方は、入れ歯のメンテナンス(調整)が必要です。歯科医師に適切な処置をしてもらいましょう。

  • 歯が折れたままになっている
  • 歯が抜けたままになっている
  • 入れ歯が壊れたままになっている
  • 話すと入れ歯がガタつく
  • 年齢より老けて見える
  • 発音がはっきりしない
  • 転びやすい

入れ歯を使うことで生活にハリが生まれます

入れ歯を使うことで、しっかりとかめるようになり、胃への負担も少なくなります。食事も楽しめるようになり、食生活がより豊かになります。かみ合わせが安定すると、発音もはっきりし、お口のまわりのシワが伸びて若々しい印象にもつながります。
また、入れ歯で歯を補うことで、奥歯でしっかりかみしめることができるようになります。踏ん張る力がつき、バランスも保ちやすくなるので、転倒の予防にも役立ちます。
入れ歯を使用することで食生活だけでなく、毎日の暮らしにもハリが生まれ、いきいきとした毎日を送ることができます。
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POINT

入れ歯は、単にかむためのものではありません。

歯を失ったままにしておくと、 からだや毎日の生活にまでよくない影響が出てしまうの。 入れ歯はご自分のお口に合ったものを使わないとだめなのよ。
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乾燥

お口の中が乾燥すると痛みが生じやすくなり、汚れも付着しやすくなるため、不快な症状が増加します。

お口の中の乾燥が与える影響

お口の中が乾燥している
多くのご高齢の方は、お口の中が乾燥しがちです。
口腔乾燥は、ほほなどの粘膜の新陳代謝、また自浄作用の低下につながり、お口の中が汚れやすくなります。

こんな方は要注意

お口の中の乾燥
次のような症状に思い当たる方はいませんか。
  • お口を開けるとにおう
  • 食べものがお口の中で広がる
  • 飲み込みにくい
  • 食べかすが常にお口の中にある
  • 何を食べてもおいしくない
  • むせることが多い
  • 入れ歯でよく傷ができる
  • 舌がヒリつく
  • むし歯が多い
  • 歯周病(歯槽膿漏)で歯ぐきが腫れる
  • 風邪を引きやすい
  • 声がかすれて話しにくい
このような方は、お口の中が乾燥している状態です。だ液がしっかり分泌されて、うるおいのあるお口を目指すとともに、お口の中の保湿も大切です。
ただし、お口の環境は人それぞれ異なりますので、まずは歯科医師や歯科衛生士にご相談いただくことをおすすめします。

乾燥を引き起こすもの

加齢に伴うからだの変化や薬の副作用により、 だ液は減少し、乾燥を引き起こします。
また、経管栄養を受けている方や口呼吸をしている方は、お口の中が乾燥しやすい状態になっています。

生きていくうえで大切なだ液

成人の場合、健康な人では1日あたり1~1.5リットルものだ液が分泌されます。だ液の働きはお口の中だけでなく、全身の健康にも重要な役割を果たしています。

だ液の主な役割

だ液を出すためには

だ液を分泌させるために最も効果的なのは、お口をしっかり使うこと、そしてお口から食べることです。食べるためには、お口の中がうるおっていることが大切で、食事をすることでだ液もさらに分泌されます。このように、よい循環が生まれます。
また、お口の中にあるだ液腺を刺激するマッサージなども効果的です。一人ひとりに合った方法でケアすることが大切です。
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POINT

だ液は健康な成人の場合、1日に約1~1.5リットル分泌されます。

それぐらいたくさんのだ液が出るから、お口を十分にうるおすことができるのよ。だ液を出すためには、お口をよく動かして、お口からごはんを食べることが大切なの。
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