粘膜のケア

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STEP1 粘膜ケアの前に

粘膜のケアとは

口腔ケアスポンジ
粘膜とは、お口の中のほほ、唇、上あご、歯ぐき、舌といった歯以外のやわらかい組織です。

ケアに適した器具

口腔ケア
粘膜は、歯以上にやさしくケアすることが大切です。粘膜は傷つきやすく、ご高齢の方の多くは粘膜が乾燥しています。

乾燥とこびりつき

お口の乾燥
乾燥の原因はさまざまですが、お口の中の乾燥は、だ液が十分に分泌されていないことを意味します。

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粘膜のケアとは

粘膜のケアは、どんな人でも必要なことなのです。

お口の粘膜とは

口腔ケアスポンジ
粘膜とは、お口の中のほほ、唇、上あご、歯ぐき、舌といった歯以外のやわらかい組織です。吸収や分泌などの機能を持ち、血管、神経などが分布しています。粘膜はお口のうるおいの源であるだ液を分泌するためのとても大切な役割を持っています。

粘膜のケアが必要な理由

食べかすが残りやすい場所
お口の中は歯だけではなく、ほほの内側や唇の内側、上あご、歯ぐき、舌の粘膜にも、食べかすや細菌が付着します。健康なお口であれば自分で清潔を保つ力である自浄作用により、汚れが洗い流されるのですが、お口の機能が低下していると自浄作用が働きにくくなります。
入れ歯を使っている場合には、入れ歯が直接ふれている部分に、お口の中やお口のまわりの筋肉にまひがある場合は、まひ側の粘膜にたくさんの汚れや細菌がついています。
自浄作用が低下しているお口の粘膜は、歯みがきだけで汚れや細菌を取り除くことが難しくなるため、粘膜をケアする意識が必要なのです。

粘膜ケアの効果

粘膜をケアすると次のような効果が期待できます。


  • 粘膜の新陳代謝を促す
  • 粘膜を清潔に保つ
  • お口の感覚を取り戻す
  • お口の筋肉のトレーニングになる
  • だ液の分泌を促す


ご高齢の方の多くは、加齢に伴うからだの変化や薬の副作用により、だ液が減少しお口の中は乾燥しています。
経管栄養の方やお口で呼吸をしている方は、とくにひどく乾燥している場合があります。
詳しくは「乾燥」ページにてご確認ください。

粘膜の汚れや細菌を取り除くことで、お口を清潔に保てると、だ液がよく出るようになります。
また、お口の筋肉トレーニングを行い、だ液がよく出るようになると、お口の自浄作用が働きます。粘膜のケアをすることにより、健康なお口を維持するためのよい循環が生まれるのです。
誤嚥性肺炎の原因菌は、舌や上あごに多く付着していることも報告されています。粘膜のケアはお口だけではなく、全身に影響する病気の予防のためにも、とても大切なケアのひとつです。

粘膜のケアは誰にとっても必要です

歯がまったくなくても、お口からなにも食べていなくても、口腔ケアは必要です。
歯をすべて失い総入れ歯になった方や、お口から食事をしていない胃ろうの方などは、口腔ケアが必要ないと誤解される場合があります。
たとえ、なにも食べていなかったとしても、粘膜の新陳代謝や痰などでお口の中には汚れがたまり、細菌はどんどん増えていきます。
お口を動かさないことや、お口から食事をとっていないことで、自浄作用が低下しています。
粘膜はケアをしていないとだ液の出が悪くなることで乾燥し、汚れやすくなってしまいますので歯の有無、食事の状態にかかわらず、粘膜のケアは必ず行いましょう。
粘膜のケアをしていると、ケアの刺激によりだ液の分泌が促されます。誤嚥しやすい方には「安全な姿勢にすること」、だ液の「のどへのながれ込みを防ぐこと」ができているか、確認しましょう。

詳しくは「姿勢を整える」「開口誘導・開口保持」「お口の中の観察」もご参照ください。
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POINT

粘膜の健康維持は、どんな方にも必要なことです。

お口から食事ができない方は、お口を動かしていない分、粘膜にはたくさんの細菌がついてしまっている恐れがあるのよ。
そんな方こそ粘膜のケアをしっかり行うことが大切なの。
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ケアに適した器具

お口の粘膜は、歯と同じ器具でケアをする傷ついてしまう場合があります。

やさしくケアできる器具

口腔ケア
粘膜は、歯以上にやさしくケアすることが大切です。粘膜は傷つきやすく、また傷がついてしまうことにより感染や口内炎のきっかけになる恐れがあります。ご高齢の方の多くは粘膜が乾燥し、硬くなっています。
乾燥している粘膜は、ほんの少しの刺激を痛みとして感じることがあります。粘膜のケアの際に痛みを強く感じてしまうと、口腔ケアの拒否につながりかねません。痛みによる口腔ケアへの拒否につながらないよう、無理をせず少しずつ、やさしくケアしていくことが大切です。

粘膜をケアするための器具

粘膜のケアの際によく使う器具と、その使い方をご紹介します。口腔ケアで使用する器具の一覧は「器具の紹介」をご覧ください。

口腔ケアスポンジ/スポンジブラシ

口腔ケアスポンジ
スポンジブラシとは、先端がスポンジでできている棒状のブラシです。
水で湿らせたスポンジ部分で、お口のほほの内側や唇の内側、歯ぐき、上あご、舌などの汚れをやさしく取り除くことができます。スポンジブラシは、 歯ブラシのようにヌルヌルした細菌の膜をはぎ取るのではなく、粘膜を傷つけずにやさしく汚れを取り除きます。
スポンジの形状は先細のものや、ギザギザしているものなど数種類あります。中には棒状ではなく指にそのままスポンジをはめられるものも登場しており、スポンジの硬さもさまざまです。柄の部分はプラスチック軸と紙軸とあり、さまざまな価格から選ぶことができます。使いやすいスポンジブラシを選びましょう。

スポンジブラシは使い捨て

スポンジブラシは使い捨てです。何回か使うことができるように思えますが、そうではありません。お口の中に入れるものですので、衛生面を考慮する意味でも1回の使用で捨てるようにしましょう。
ウイルスや感染症の感染を予防するためにも他の方との共有はせずに、個人のものを必ず用意しましょう。

スポンジブラシの使い方

粘膜のケアをする際のポイントは「ケアの間も常に清潔に洗うこと」です。

口腔ケア用ウエットティッシュ

口腔ケア用ウェットティッシュ

口腔ケア用ウエットティッシュとは、口腔ケアのためにつくられたケア用ウエットティッシュです。
ノンアルコールで保湿成分が入っているため、お口をケアする際にも安心して使うことができます。口腔ケア用ウエットティッシュそのものが水分を含んでいるため、水などを使う必要がなく、誤嚥の危険性が高い方の粘膜のケアをする際には重宝します。

口腔ケア用ウエットティッシュの使い方

スポンジブラシのように水を用意しなくても、ケアをすることができます。

口腔ケア用ウェットティッシュの使い方

舌ブラシ

舌ブラシ
舌ブラシは、舌に付着した食べかすや汚れを取り除くための舌専用のブラシです。
歯ブラシよりも毛がやわらかくできているため、舌をケアするときに粘膜を傷つけにくくなっています。
舌ケアが注目を集めていることもあり、舌ブラシの種類はさまざまです。
 

舌ブラシは使い捨て?

舌ブラシは使い捨てではありませんが、歯ブラシと同様に、1~2か月に一度の交換が必要です。使用後は流水下で汚れを洗い流し、ブラシ部分を上にして立てて保管しましょう。しっかりと乾燥させ、細菌の繁殖を防ぎます。

舌ブラシの使い方

保湿剤

保湿ジェル
保湿剤は、お口の中のための保湿ジェルです。
乾燥しているお口の中にうるおいを与え、清潔にして口臭を予防する効果があります。口腔ケアの前にはたっぷりと、口腔ケア後にはうっすらと、また就寝前などにお口の中に塗布します。
ご高齢の方は、お口の中が乾燥していることが多いため、口腔ケアの場面でも保湿剤はよく登場します。
保湿剤はジェルが固いものから、やわらかかいものまで、多くの種類があります。歯科医師・歯科衛生士に相談しながら、ケアを受ける方にあった保湿剤を選びましょう。

保湿剤の使い方

保湿剤は、指またはスポンジブラシでお口の中に塗布します。必ずグローブを着用しましょう。

お口の中が乾燥しているから、と多量の保湿剤を使用すると、保湿剤が固まってしまいます。
また、保湿剤をかたまりのまま、お口の中に塗布すると誤嚥の危険もあります。適量を心がけましょう。粘膜に痛みがある場合は、無理をして触らず、歯科医師・歯科衛生士に相談しましょう。

乾燥の改善」ページでは、保湿について説明していますので、ご参照ください。
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POINT

やさしくケアできる器具を使用するようにしましょう。

口腔ケアのときに感じた痛みのために、拒否につながってしまうことがあるの。だから、粘膜のケアの器具はできるだけ痛みを感じないように工夫がされているのよ。
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乾燥とこびりつき

粘膜の乾燥は出血を引き起こすこともあります。

お口の乾燥とだ液の減少

お口の乾燥
ご高齢の方の多くは、お口の中が乾燥しています。 乾燥の原因はさまざまですが、お口の中の乾燥は、だ液が十分に分泌されていないことも考えられます。 だ液が出にくくなってしまうと、粘膜が傷つき出血しやすくなり、炎症を起こすこともあります。
お口の中の乾燥は、お口の動きや感覚低下を引き起こすことがあり、会話や味覚にも影響をおよぼしてしまいます。スポンジブラシや指などがふれたりするだけで、痛みを感じるようになってしまうこともあるため、口腔ケアでは保湿を十分に行い、うるおっていてよく動く、健康なお口を目指しましょう。
乾燥とだ液の大切さについては「乾燥」ページでをご参照ください。

とても痛いお口の乾燥

お口の乾燥は、重症化すると痛みを伴います。
歯ブラシや指などの刺激はもちろん、お口を動かすことでさえ、痛みを伴うことがあります。
お口の中の乾燥が進むと、痛みを感じるだけではありません。
自浄作用が十分に機能していない場合、本来洗いながされるはずのお口の中の食べかすや、はがれ落ちた粘膜、痰などがお口の中にとどまり、舌や上あごなどのお口の乾燥している粘膜にしっかりとこびりつき、カピカピに乾燥してしまう状態になることがあります。

こびりついた汚れの取り除き方とは?

こびりついた汚れをいきなり取り除こうとすると、粘膜から出血してしまったり、痛みを与えることになってしまい、口腔ケアの拒否や血液による感染の危険につながりかねません。
乾燥しているお口の中の汚れをとる、または口腔ケアを行う場合、保湿が必要です。
「ブクブクうがい」による保湿や、保湿剤による「お口の中のマッサージ」ができる方には、実施します。
とくに保湿剤を使って行うお口の中のマッサージは、だ液の分泌を促すことから、リラクゼーション効果もありますので乾燥による痛みが強くない場合は、無理のない範囲で取り組みましょう。

手順については「保湿」と「開口誘導・開口保持」をご参照ください。

用意する器具

用意する器具
次の器具を用意しましょう。

  • 保湿剤
  • スポンジブラシ
  • 口腔ケア用ウエットティッシュ

乾燥してこびりついた食べかす、はがれ落ちた粘膜や痰をスムーズに取り除くためには、保湿剤を多めに塗布し、ふやかしたうえで、スポンジブラシや口腔ケア用ウェットティッシュを使うと効果的です。
無理なく汚れを取り除くことができるため、乾燥して敏感になっている粘膜でも比較的刺激が少なくケアが行えます。

こびりついた汚れの取り除き方

長期間、粘膜にこびりついてしまっていた汚れは、すぐに取り除けるものではありません。
一回の口腔ケアですべてきれいに取り除くことができなくても、保湿と粘膜のケアを繰り返していくことで、取り除きやすくなりますが、むずかしい場合には必ず歯科医師・歯科衛生士に相談しましょう。
取り除くことができない分は、次回のケアにまわし、少しずつ健康なお口を目指しましょう。
こびりついた汚れの取り除き方
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POINT

乾燥したお口の中のケアは器具を使ってやさしく行います。

乾燥には何よりも保湿が大切なの。そして、あせらないことなの。保湿を続けていくことで、粘膜が少しずつ健康になっていくのよ。
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