嚥下体操
食べるための筋肉をトレーニングする体操、それが嚥下体操なの。
嚥下体操ってなーに?
嚥下(えんげ)とは「飲み込み」のことです。
嚥下は、舌やお口の周り、首などの筋肉を使って、食べ物や飲み物をのどの方へ送り込み、のどを通過した食べ物をさらに食道へ送り込む一連の動作を指します。
嚥下体操は、そのために必要な筋肉の体操です。
食べる時に使うのはお口だけ?
お食事やだ液などを飲み込む際には、ほほ、舌、のどなどのお口の筋肉を使うことは想像しやすいですが、実はからだの筋肉も大きく関係しています。
食べる動作を思い出してみてください。
まずは目で食べ物を認識し、箸やスプーンを持ちます。次に手を伸ばして食器をつかみ、食べ物を取り、口まで運びます。この時、手だけではなく、頭を支える首や肩の筋肉、腕や肩の筋肉がスムーズに協働して動くことで一連の動作が行えます。
さらに、食べる際には姿勢も大事な要素の一つです。適切な姿勢を保つことが難しいと、誤嚥のリスクが高まります。
また、万が一誤嚥してしまった場合、しっかりとむせることができると、気管に入ってしまった食べ物を吐き出すことができます。この「むせる」という動作には、背筋や腹筋、そしてしっかりと足を地面につけてふんばる足の筋肉なども必要になります。
全身の筋肉が、それぞれの役割を果たすことでスムーズに食べることができますし、また万が一の場合でも安全の確保ができます。
どれか一つが欠けても食べることは困難になります。
そのため嚥下体操には、お口だけではなくからだの筋肉を動かす要素が含まれています。
嚥下体操で誤嚥予防
嚥下体操をおすすめする目的のひとつは「誤嚥予防」のためです。
誤嚥とは、通常食道に行くべき食べ物や飲み物が、誤って気管へと入り込んでしまうことです。
食べ物やだ液に含まれる細菌が原因で、誤嚥性肺炎を引き起こす危険性もあります。詳細は、「口腔ケアの効果」ページの「嚥下のしくみ」と「誤嚥のしくみ」をご確認ください
ミニ知識 誤嚥と誤飲の違い?
「誤嚥」という言葉はここ数年広く知られてきました。
誤嚥とは、本来食道に行くべき食べ物が誤って気管に入ってしまうことですが、では誤飲とはどういう意味でしょうか。
一見すると飲み物、つまり液体が気管に入ってしまった際に使用する言葉のように思えますが、実は違います。誤嚥性肺炎がだ液に含まれる細菌から発症することからも分かるように、液体が気管に入ってしまっても誤嚥なのです。
誤飲とは、ボタンや電池など、食べ物ではないものを誤って飲み込んでしまった場合に使用します。
万が一、誤嚥や誤飲をしてしまった方への対応をする際には、医療従事者や救急スタッフなどへ正しく情報を伝えるようにしましょう。
食べるため以外にも
嚥下体操を続けていくことは、食べるための筋肉のトレーニングだけではなく、笑顔をつくることや、楽しくおしゃべりをすることにもつながります。
これは、使っている筋肉がほとんど同じためです。
筋肉は、動かすほどリハビリになり、バランスよく協力し合う動きへと改善されます。
ぜひ皆さんで嚥下体操をしましょう。
嚥下体操はいつ行えばいいの?
嚥下体操を実施する一番よいタイミングは、お食事の前です。
嚥下体操によりお口やほほなどを動かすことで、だ液がよく出るようになり、飲み込みやすく食べやすくなりますので、誤嚥を防ぐことにもつながります。
そのほか、「テレビを見ながら」、「お風呂に入りながら」など、「ながら体操」として嚥下体操をしていただいてもよいでしょう。
大切なのは無理せず、毎日継続していくということです。
お食事の前のお口の準備体操だと思い、皆さんで楽しみながら実践してみましょう。
やってみよう!嚥下体操
ある程度からだに負荷をかけないと機能訓練にはなりませんが、ハリキリすぎて、肩や首を痛めてしまっては本末転倒です。
実際に行う際には「無理や痛みのない範囲で」を心がけて、周囲の人やものとの感覚を十分に考慮しましょう。
嚥下体操は次の9つの項目で構成されています。
- 01. 姿勢
まずは、姿勢を整えて座り、全身の筋肉バランスを整えます。 - 02. 深呼吸
鼻から吸って、お口から吐きます。長く息を吐くようにしましょう。
嚥下体操を始める前に、気持ちや緊張した筋肉をリラックスさせます。 - 03. 首の体操
嚥下に関係する筋肉は、首に多く集中しています。
筋肉をゆっくり動かして筋肉をほぐすことで、食べる準備を始めます。 - 04. 肩の体操
息を吸いながら肩を引き上げて、スッと力を抜くように息を吐きながら肩を下げます。 - 05. 口の体操
お口の周りの筋肉をほぐし、動かすためのトレーニングです。大げさにお口を動かしましょう。 - 06. 頬の体操
お口の中に空気をため、ほほを内側から膨らませる筋肉のトレーニングです。しっかり噛むために、また、食べこぼし防止や、鼻へ食べ物が流れ込むのを防ぎます。 - 07. 舌の体操
食べること、そして発音をするために欠かせない舌。咀嚼時、嚥下時の舌の動きを保つことができます。 - 08. 発音練習
「パ」「タ」「カ」「ラ」と発音することで、唇や舌を動かします。唇、舌の動きを目的別にトレーニングします。 - 09. 咳ばらい
誤嚥した際に、むせるためのトレーニングです。
やりすぎてしまうと喉を痛めることもあるので2~3回程度でかまいません。
ぜひダウンロードをして、行いましょう。
スムーズな嚥下(飲み込み)に必要な筋肉の体操を一枚にまとめた資料
「嚥下体操」を
ダウンロードできます。
嚥下体操って、ちゃんと飲み込むための体操なんだね。
そうなの。介護現場では少しずつ取り入れられてきているの。動きが小さくなってしまいがちだから、大きく動かす意識を持つことがポイント。